鼻の症状に歯が関わることがある
上の奥歯の根は、鼻につながる空洞である上顎洞に近い位置にあります。歯の根の先や周囲の感染が上顎洞に及んだ状態を、歯性上顎洞炎といいます。片側の鼻づまり、においのある鼻水、頬の痛みや圧迫感などがきっかけで見つかることがあり、必ずしも歯の痛みを伴うわけではありません。
ただし、片側の鼻症状があれば必ず歯が原因というわけではありません。鼻や副鼻腔の病気も含め、症状と診察、画像を合わせて判断します。過去の根管治療、抜歯、インプラント治療と症状が出た時期は参考になりますが、治療歴があるという理由だけで原因を決めつけることはできません。
受診時は、症状が始まった時期、左右の違い、歯科治療の経過、使っている薬を伝えてください。目の周りの腫れや見え方の異常、強い頭痛、高熱、急速に広がる顔の腫れがある場合は、通常の予約を待たず、速やかに医療機関へ相談します。
歯科と耳鼻咽喉科で原因を調べる
歯科では、上の奥歯のむし歯、根の治療の状態、歯周組織などを調べます。耳鼻咽喉科では、鼻や副鼻腔の炎症、膿が排出される経路の状態などを確認します。一方だけの所見では判断が難しいこともあり、必要に応じて紹介や情報提供を行い、歯と鼻の両面から診断します。
画像に影が見つかっても、それだけで原因の歯や抜歯の必要性が決まるとは限りません。症状の経過や口の中の所見と一致するかが重要です。他院で撮影した画像がある場合は、撮影日やデータの持参方法を相談しましょう。調べたい範囲や画質が異なれば、追加の撮影が必要になることもあります。
紹介を受ける場合は、紹介状に加え、予約方法、持参する資料、これまでの治療内容を確認します。受診までに症状が悪化したら、予定日を待つべきか紹介元へ相談してください。すでに両方の科へ通っている方は、それぞれで受けた説明や処方を共有すると、治療の重複や行き違いを防ぎやすくなります。
歯を残せるかと、鼻に必要な治療を検討する
歯を残せるかは、根の破折、残っている歯の量、歯周組織の状態、感染の範囲などによって異なります。根管治療や外科的な処置で対応する場合も、抜歯が必要な場合もあります。鼻の症状があるからすぐに抜くのではなく、保存できる見込みと、それぞれの治療の負担を確認して判断します。
歯の感染源への対応に加え、耳鼻咽喉科での薬物療法や処置が必要になることがあります。抗菌薬で症状が軽くなっても、感染源が残っていれば再び悪化する場合があります。一方、歯科治療の直後に鼻の違和感が残っているだけで、治療が失敗したと判断することもできません。経過を確認する時期を決めておきましょう。
上の奥歯の抜歯後に、口から鼻へ水や空気が通るように感じた場合は、処置を受けた歯科へ連絡してください。鼻をかむことなどの制限は、傷の状態に応じた指示に従います。インプラント治療後に鼻の症状が現れた場合も、自分で装置を触らず、担当歯科と耳鼻咽喉科に治療歴を伝えて確認します。
治療後も歯と鼻の経過を共有する
治療が続くときは、原因として何が確認され、歯科と耳鼻咽喉科でそれぞれ何を行ったかを整理します。鼻水や頬の違和感が減ったか、噛む痛みが残っているか、発熱がないかを伝えると、経過の判断に役立ちます。改善が乏しい場合は、感染源や鼻の排出経路などを再評価する必要があります。
喫煙、全身の病気、アレルギー、服用中の薬も、治療を考えるうえで大切な情報です。処方された薬は指示どおりに使用し、残っている抗菌薬を自己判断で飲まないでください。症状が落ち着いても、予定された歯科治療や検査が終わっているか、担当医に確認しましょう。
複数の医療機関に通う場合は、次回の受診先と時期、急変時の連絡先を明確にしておきます。歯科の処置後に鼻の経過確認が必要な場合も、その逆もあります。通院の負担が大きいときは、検査結果の共有や予約の調整について相談し、必要な診療が途切れないようにしましょう。
日本歯科札幌での受診・通院について
持病がある方、継続してお薬を服用している方、ほかの医療機関で治療中の方は、歯科の相談とあわせてお知らせください。現在の健康状態や治療歴は、歯科治療を検討するうえで大切な情報です。
札幌市内外で受けた治療の続きを相談する場合は、わかる範囲で治療内容と時期を整理してお越しください。当院で対応できる内容や追加の確認が必要な事項を、診察のうえでご案内します。
持病や服用中のお薬、医科での検査結果がある方は、予約時にお知らせください。診療内容によっては、かかりつけ医への確認や専門の医療機関への紹介が必要です。
よくあるご質問
歯性上顎洞炎では、原因の歯を必ず抜きますか?
必ず抜くわけではありません。歯の破折や感染の範囲、歯周組織などを調べ、保存できるかを判断します。鼻への治療もあわせて検討します。
鼻の薬で症状が治まれば、歯科の診察は不要ですか?
歯が原因と考えられる場合は、感染源が残っていないか確認が必要です。症状が軽くなったことを担当医に伝え、歯科の評価や治療を続けるか相談してください。
参考情報

日本歯科グループ代表
早川 好昭