薬の名前だけでなく、目的と使用歴を伝える
ビスフォスフォネート製剤やデノスマブなどの骨吸収を抑える薬は、骨粗しょう症や、がんの骨転移などの治療に使われます。これらの薬に関連して、あごの骨が壊死する「薬剤関連顎骨壊死」が起こることがあります。ただし、薬を使用するすべての方に発症するわけではなく、治療目的、投与量や期間、口の感染などによってリスクは異なります。
受診時は、お薬手帳などで薬の名称、飲み薬・注射・点滴の別、開始時期、直近の投与日を伝えてください。現在は使っていない薬の使用歴も重要です。骨折の経験、がんや糖尿病の治療、ステロイドなどほかの薬についても共有すると、歯科処置と全身の治療をあわせて検討できます。
抜歯前に一律に休薬すれば顎骨壊死を防げるとはいえず、休薬の有用性を示す十分な根拠はありません。薬を中止したり、注射を長く延期したりすることで、骨折などのリスクが高まる場合もあります。インターネットの休薬日数を当てはめず、薬の変更が必要かどうかは処方医と歯科医師の連携のもとで判断します。
投与前も投与中も、口の感染を放置しない
これから薬を使い始める場合は、可能であれば事前に歯科でむし歯、歯周病、合わない入れ歯などを確認します。抜歯などが必要なときは、薬を始める時期との調整を相談します。ただし、歯科の準備を理由に、必要な全身の治療を自己判断で延期しないでください。優先順位は病気の状態によって異なります。
投与中も歯科受診を続け、感染や粘膜の傷を早めに見つけることが大切です。「薬を使っているから歯には触れない方がよい」と考えて受診を控えると、感染が悪化することがあります。歯ぐきの腫れ、膿、歯のぐらつき、痛み、骨が見えるような変化があれば歯科へ連絡しましょう。
骨が見えていなくても、症状によっては詳しい評価が必要です。自分で傷を広げたり、露出したように見える部分を削ったりしないでください。日頃は状態に合った清掃を行い、入れ歯が当たる場所は調整を受けます。薬の種類や投与間隔が変わったときは、次の歯科受診時にも情報を更新してください。
抜歯の必要性と処置に伴うリスクを比較する
薬を使用していても、抜歯が一律に禁止されるわけではありません。感染した歯を残す不利益と、抜歯に伴うリスクを比較して判断します。根の治療などで保存できるか、専門機関での処置が適切かも検討します。がん治療で高用量の薬を使用する場合と、骨粗しょう症の治療では、同じ薬でも判断の前提が異なることがあります。
処置の予定が決まったら、処方医への照会や必要な検査を含めて準備します。歯科の予約日に合わせて自分で注射を飛ばしたり、服薬を止めたりしないでください。過去に休薬した経験があっても、今回も同じ対応が適切とは限りません。また、休薬したことだけで顎骨壊死のリスクがなくなるわけではありません。
紹介先で治療を受ける場合は、薬の情報、歯科の画像、これまでの経過を共有します。処置後の診察をどこで受けるかも確認しましょう。説明を受ける際は、治療の目的と代替方法に加え、感染が残る場合の対応や傷の治癒を確かめる時期まで聞いておくと、見通しを持って通院できます。
傷の治り方と日常の変化を確認する
抜歯後は痛みが少なくても、指定された診察で傷の状態を確認します。傷が閉じない、腫れや膿が続く、骨が見えるといった変化は、処置を受けた歯科へ伝えてください。これらの症状だけで顎骨壊死と決まるわけではありませんが、自己判断で長く様子を見ないことが大切です。
清掃、食事、薬の使用は、その時の傷に合った指示に従います。残っている抗菌薬や家族の薬を使わず、処方について疑問があれば歯科や薬剤師へ相談してください。食べにくさや入れ歯の当たり方が変わった場合も、我慢せず確認を受けましょう。
服薬管理に家族や介護者が関わる場合は、注射や点滴を含む薬の記録と次回予定を一緒に整理します。医科で薬が変わったとき、歯科で処置を受けたときは、双方へ伝えられるようにしておくと安心です。全身の治療と口の健康管理を並行して続けることが、予防の基本になります。
日本歯科札幌での受診・通院について
持病がある方、継続してお薬を服用している方、ほかの医療機関で治療中の方は、歯科の相談とあわせてお知らせください。現在の健康状態や治療歴は、歯科治療を検討するうえで大切な情報です。
札幌市内外で受けた治療の続きを相談する場合は、わかる範囲で治療内容と時期を整理してお越しください。当院で対応できる内容や追加の確認が必要な事項を、診察のうえでご案内します。
持病や服用中のお薬、医科での検査結果がある方は、予約時にお知らせください。診療内容によっては、かかりつけ医への確認や専門の医療機関への紹介が必要です。
よくあるご質問
抜歯前は骨粗しょう症の薬を止めた方がよいですか?
自己判断で止めないでください。一律の休薬による予防効果は明らかではなく、中止による骨折などのリスクも考える必要があります。処方医と歯科医師が相談して方針を決めます。
以前使っていた薬も歯科に伝える必要がありますか?
必要です。過去の使用歴が治療の判断に関わる場合があります。分かる範囲で薬の名称、使用期間、中止した時期を伝えてください。
参考情報

日本歯科グループ代表
早川 好昭